プロフィール
パン職人
渡辺俊介
Syunsuke Watanabe
1973年生まれ 阿木在住。地元三重を離れ名古屋で就職するも、疑問を抱きパン屋を志す。奥さんの地元である阿木に15年前に移り住み、4年半かけセルフビルドで店舗を完成させる。地元の食材を使ったおいしいパンのうわさは名古屋まで届き、週末には多くのファンが駆けつける有名店に。
阿木のおいしいパン屋さんCultivateur「キュルティヴァトゥール」をご夫婦で営まれる渡辺俊介さん。今回は渡辺さんに阿木でパン屋さんを始めたきっかけから、まちへの想いや移住についてお聞きしました。
阿木でパン屋さんを始められたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
僕は三重県熊野出身で、大学を卒業してまず会社に入り、会社員で終わるのは自分の中に違和感があったので、何か身に着けようと思いパン屋を目指しました。二十五歳で一年間製パン科に通って勉強し、名古屋のお店で三年働きました。経験を積んで奥さんと二人でお店を始めようと思ったときに、僕の地元か奥さんの地元かで検討し、奥さんの地元の阿木で始めることにしたんですよね。先立つものもない状態でしたけど、自分たちが食べていくことができればいいかなと思い、阿木に二〇〇二年の九月に移住してから、もう十五年ぐらい暮らしています。
このお店は土地を祖父から借りて、自分たちで作りました。お義父さんが家具を作っていたので木工機械はありましたし、お義父さんも自身の工房を十年かけて建てていたこともあり、僕たちも出来るという思いがありました。ですが建てるのに四年半もかかったので、その間僕は明智にある陶器工場で働いていました。セルフビルドなのでお店の端っことかはあんまり見ないでほしいです(笑)。お店の大きな梁などは岩村にあった小学校を解体したときに、お義父さんが知り合いの解体屋さんから譲り受け、取っておいたものです。買ったらいくらするのかわからないお店中央の大きなテーブルも、オープンした際にプレゼントしていただきました。

店舗中央には渡辺さんのお義父さんが作られた大きな机が。カフェスペースになっており、パンを買ってそのまま召し上がる方も多い。
Cultivateurという店名はどんな想いでつけられたのでしょうか。
キュルティヴァトゥールとはフランス語で、耕作者とか耕すという意味です。耕すは英語でcultivate。これはculture・文化の語源になったといわれています。僕らも自分たちの未来を耕したいという思いからお店の名前にしました。最初は自分たちで畑をして、そこで取れた野菜をランチに出そうと考えていましたが、できなかったですね。なめてました(笑)。今はおいしい野菜や果物・パンに使う小麦などを作っている方々が地域にいらっしゃるので、全部自分でやる必要はないと思っていますね。生産者さんもこちらの要望に応えてくれたりしてすごく助かっています。

Cultivateur自慢のパン。土日には名古屋からも多くのお客さんが買いに来る。
暮らし始めて十五年が経ちましたが渡辺さんにとって阿木という地域はどのような場所になりましたか。
阿木って僕が来てから風景が変わってないんですよね。他の場所だと地形とか自然とか結構変わってるんですよ。阿木は自然もありつつ、電車で名古屋に一時間で行けたりする便利さも、街の人からしたらかなりいいものなんです。ど田舎暮らしもできるし、街に出勤することも出来る。このちょうどいい感じが、阿木のすごい魅力だと思います。僕たちが移住するときに選んだ大きな理由の一つですね。
でもお店を開かれている方々はだんだん減ってきていて、僕が来てからでもいろんなお店が閉まっていくのを見ていました。僕は阿木でもやっていけると思うんですよね、このお店もここだからできたと思っています。多分ほかの地域で同じことをしても今のようにはいかなかったんじゃないかと。お客さまが選んでくれているのは美味しいパンだけじゃなくて「いい風景だね」という理由も大きいと思うんです、パンも美味しく作んなきゃいけないし僕はそれに全身全霊を込めているんですけど、お客さんが来てくれるのはこの湖の風景のおかげだと思っています。ここは特に、スギとかヒノキじゃない雑木の林があるので季節ごとに楽しめる風景も魅力ですよね。だから僕は阿木というこの場所で変わらないものを提供し続けられたらいいなと思っています。

店舗からの風景。雑木林と少し先には豊かな自然に囲まれた阿木川湖がたたずむ。
お話を伺っていて、渡辺さんは阿木を外からの視点で見ている様に感じました。渡辺さんにとって阿木はどのように見えていますか。
僕自身、これまでお店以外あまり地域との接点を持つことがなかったのですが、保育園で初めて子供を通じて、地域のお父さんやお母さんと接点ができた感じです。阿木では通勤されて外に働きに行く方々も多いので、地元でも僕と似た状況の方が多いかもしれないですね。今でもまだ知らないことばかりなので、繋がりを得られる様な取り組みに参加していないと、分からない事も多いと思います。
どんどん人も減っていくので、もっと人が増えていくようなことができたらなと思います、僕の場合はお店をしているので人が増えることは重要なことですし。そのためにそれがどういう形なのかはわからないですけど、移住されたりする方々にもう少し住みやすい何かをみんなで見つけていかなければいけないなって思います。僕もできることをしながら、みんなと一緒に移住したい人に選んでもらえるような地域にしていきたいなと思っています。
詳しい情報はこちら
Cultivateur(キュルティヴァトゥール)
〒 509-7321 岐阜県中津川市阿木2664-270
電話:(0573)63-3707
FAX:(0573)63-2887
営業時間:平日 10:00 〜 16:00 土日祝日 10:00 〜 18:00
定休日:月火水
(その他臨時休業あり。月曜日が祝日の場合は営業します。)
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